私が初めて参加したときの課題図書は「当麻」(小林秀雄)でした。
とにかく難しくてわからない。七回も八回も 時間を空け、一字一字ゆっくり噛みしめるように音読してみても作者の言わんとする意味がほとんどわかりませんでした。
特に気になったいくつかの文が常に頭にあり、小林秀雄について、世阿弥や能についての資料も数冊読んでみました。DVDで能を鑑賞したり、能面の種類をじっと眺めてみたりもしました。
読書会当日までまさに「当麻漬け」のような毎日を過ごしました。
日頃から多くの本を読んでいますが、これほど時間と労力をかけて一冊の本(作品)を読んだことは初めてです。読書会に参加して、やっと理解できたと思った部分、教えられることが多くありました。
その後は、「当麻」で述べられた小林秀雄のものの見方、考え方を私はどう思うかをときどき考えたりしています。
ひとつのことに真正面から真剣に取り組む。それは、とても得難い、豊かな時間であり、経験であると思います。
この読書会に参加することでとても貴重な体験をさせてもらったと思っています。